あぶない刑事 第40話「温情」
あぶない刑事 第40話「温情」
放送期間 1987年7月12日
放送時間 日曜日21:00-21:54
放送局 日本テレビ系列
制作 セントラルアーツ

▼スタッフ

企画 岡田晋吉(日本テレビ) 黒澤満
監督 村川 透
脚本 新井 光
プロデューサー 初川則夫(日本テレビ) 伊地智啓
音楽 志熊研三

▼キャスト

舘ひろし 柴田恭兵 浅野温子 仲村トオル ベンガル 山西道広 御木 裕 秋山武史 中条静夫 山本理沙 長戸勝彦

▼山本理沙さんの役名

ヨーコ(ゲスト出演)

▼ストーリー

麻薬仲買人の久保山の射殺体が山下埠頭で発見された。同じ頃、現場近くで頭を打って記憶喪失になった少女(山本理沙)が保護された。事件を目撃した可能性があるが、何も覚えていないという。大下(柴田)たちは彼女をヨーコと名付ける。ヨーコは自分の記憶を取り戻すためにも捜査に協力したいと申し出るが、やがて回復したとき、何故か姿を消してしまう。

▼主なロケ地

こちら

▼コメント

人気ドラマ「あぶない刑事」の第1シリーズ(1986/10/5〜1987/9/27放送、全51回)の終盤に、山本理沙さんがメインゲストで出演しました。
役柄は事件の鍵を握る記憶喪失の少女で、柴田恭兵のユージこと大下刑事にほのかな想いを寄せます。
素直で大人しい可憐な少女のキャラなので、スケバン役で啖呵を切っている時とは全く違うイメージの理沙さんが見られる貴重な一作です。いかにも80年代っぽいファッションにも注目です。

▼主な登場人物

舘ひろし
鷹山敏樹(タカ)
(舘ひろし)
柴田恭兵
大下勇次(ユージ)
(柴田恭兵)
浅野温子
真山 薫(カオル)
(浅野温子)
仲村トオル
町田 透(トオル)
(仲村トオル)
中条静夫
近藤卓造(課長)
(中条静夫)
山本理沙
ヨーコ(田代千香子)
(山本理沙)
長戸勝彦
田代慎介
(長戸勝彦)

▼出演シーン&全ストーリー紹介

1.
県警から指名手配されていた3人の麻薬仲買人のうちの1人、久保山の射殺体が山下埠頭で発見された。
現場には若い女物の赤い靴が片方。
一方、港署には病院から、記憶喪失の少女の身元を調べてほしいと通報があった。

少年課のカオル(浅野)からの連絡で横浜開港記念病院に急行したタカ(舘)とユージ(柴田)。
病室には、頭に包帯を巻いた少女(理沙さん)が病衣姿でベッドに腰掛けている。
赤い靴は彼女のものだった。
カオルの話によれば、早朝の山下公園を頭から血を流しながらふらふら歩いているところを保護されたとのこと。
あぶない刑事しかも頭を打ったときのショックで記憶喪失になってしまっていた。
所持品は財布、ハンカチ、そして贈答用の細いリボンの掛けられた小さな包み。
タカ「開けてもいいかな?」
少女「はい・・・」
中に入っていたのは、裏に「S・T」のイニシャルが刻まれたペンダント。
タカ「恋人?それとも友達?」
ユージ「何でもいいんだ、何かひとつぐらい覚えてないかな?」
少女(頭を下げて)「・・・すみません」


2.
少女は仮にヨーコと名付けられた。
事件と関わっている可能性が高いため、課長(中条)たちはひとまずその回復を待つことにして捜査を続行。 田中(ベンガル)と吉井(山西)たちは久保山の仲間の北沢と君塚のアパートを捜索し、2人が拳銃を入手したことを突き止めた。
一方、病院のロビーではカオルと鈴江(御木)が、ヨーコがいなくなったと騒いでいた 。

あぶない刑事 その頃、港署にはヨーコがユージを尋ねて来ていた。
武田巡査「カッコイイ人って・・・ボクのことかな?」
ヨーコ「いいえ・・・刑事さんです」
武田「刑事でカッコイイ人なんてうちにいたかなあ」
そこへ、トオル(仲村)が入ってくる。
武田「まさかアイツじゃないだろうね。怒るよ」
トオル「あれっ・・・君・・・もしかして!」
ヨーコを見て驚くトオル。

3.
山下公園。
海を見ているヨーコ。
そこへ、ユージと鈴江。
あぶない刑事 ユージ「どうしたんだ・・・みんなに心配掛けて」
ヨーコ「すみません」
ユージ「で、俺に用って何?」
ヨーコ「あの・・・あたしがいたところに連れて行ってください」
ユージ「ここだよ、ここで保護されたんだ」
ヨーコ「いえ・・・あたしの靴があったところへ」
鈴江「コロシの現場ですよ」
ヨーコ「あたし、思い出したいんです、自分のことを。病院にいても不安なだけで何も思い出せないんです」
ユージ「気分は?頭痛くないか?」
ヨーコ「大丈夫です」

4.
ユージたちはヨーコを連れて山下埠頭の現場に行くが、結局ヨーコの記憶は戻らない。
ヨーコ「すみませんでした。わざわざ連れて行ってもらったのに」
ユージ「そのうち思い出すさ。辛かったろう?」
ヨーコ「いえ・・・何も覚えてないんですから」
ユージ「これ協力してくれたお礼」と、ペンダントを取り出す。
ヨーコ「協力なんて・・・私がお願いしたのに」
あぶない刑事 ユージ「大したもんじゃないんだから・・・ホントの名前がわからないから、ヨーコにしといた」
ヨーコ「嬉しい。記念になります」
ユージ「あんまりいい記念じゃないけどな(笑)」
ヨーコ「いえ刑事さんと知り合えた記念に」
ユージ「俺と?」
ヨーコ「はい」
ユージはペンダントにキスする。
「おまじない、しといたからな。記憶がすぐ戻るぞ」
と言って、ヨーコの首に掛けてやる。嬉しそうなヨーコ。

5.
あぶない刑事 捜査に戻るユージ。
しかし、ふと振り返ると、そこにはヨーコの姿が。

公衆電話でカオルと話すユージ。
カオル「ヨーコは何故か大下さんが気に入っているみたいなのよ。あたしたちじゃ嫌なんだって!」
電話を終えてヨーコの方を見ると、猛スピードでヨーコ目掛けて突進する車の影が。
「ヨーコ!!」
はっとして振り返るヨーコ。
間一髪のところでヨーコを助けるユージ
車を運転していたのは、北沢と君塚だった。

6.
あぶない刑事 喫茶店で話をするタカ、ユージ、トオル、そしてヨーコ。
タカ「北沢と君塚に狙われた?」
ユージ「あの二人に間違いない」
トオル「やっぱり彼女、何か見ているんじゃないんですか」
首を振るヨーコ。
タカ「北沢と君塚に近づく早道ではあるな」
ユージ「奴ら必ず襲ってくるだろうな」
トオル「危険ですよそれは」
ヨーコ「あの・・・よかったらあたしにお手伝いさせてください」
トオル「君!」
ヨーコ「あたし早く自分が誰なのか知りたいんです。それが刑事さんのお役に立つのなら少しぐらいの危険は・・・」
トオル「だめだ。相手は君の口を封じようとしてるんだぞ」
ユージ「でもお前と俺と二人でがっちりガードしてりゃ大丈夫だろう・・・」

7.
タカは「サルビア号」の船員・田代慎介が暴力団の銀星会に麻薬の話を持ち込んだとの情報を掴む。
田代慎介・・・「S・T」・・・。
田代が麻薬の運び屋であると同時に、ヨーコがペンダントを贈ろうとしていた相手であると睨み、連行する。

あぶない刑事港署の取調室。
机を挟んで座っているトオルと不安げな表情のヨーコ、その脇にユージ。
そこへタカが田代を連れくる。
ヨーコを見て、かすかに動揺する田代。
田代をじっと見つめるヨーコ。
タカ「知ってるな?」
田代「・・・知りません」
田代に掴みかかるタカ。
するといきなりヨーコが机に突っ伏してしまう。
「やめて!やめて下さい!やめて下さい!やめて!やめて!やめて下さい! 」

8.
サルビア号の田代の船室を調べたがヘロインは発見されず、田代は釈放される。田代を尾行した タカは、田代がヘロインを隠し場所から取り出した現場を押さえるが、銀星会の男に殴られて取り逃がす。

一方、ユージとトオルはヨーコをガードする。
トオルの運転する車中でヨーコに話しかけるユージ。
あぶない刑事 「昨日会った田代慎介は麻薬密輸の容疑でマークされてるんだ。もし彼がヨーコの恋人かボーイフレンドだとしても麻薬密輸が事実なら、俺たちは奴を逮捕する。 ・・・それでも記憶を取り戻したいか?」 「・・・はい」
トオル「先輩、さっきから後ろに妙な車が!」
ヨーコ「大下さん!」
ユージ「心配するな」

後ろの車に乗っているのは、実は田中と吉井の両刑事。
ユージの計画で、ヨーコの記憶を蘇らせるために一芝居を打とうというのだ。
車を止めて出てくる、ストッキングで変装した田中と吉井。
トオル「先輩!北沢と君塚ですよ!」(トオルは芝居に気づいていない)
ユージは車を飛び出して、格闘(の芝居)をはじめる。
揉み合うユージと田中。
それを見ているうちに表情を強ばらせるヨーコ。
田中は拳銃を空に向けてぶっ放す。
それを聞くやいやな、頭を抱え込むヨーコ。
「・・・お兄ちゃん・・・」

・・・

あぶない刑事 ヨーコの回想シーン。
夜の山下埠頭で久保山たちと揉み合う田代。
その傍らにヨーコ。
久保山の取り出した拳銃で、逆に久保山を撃ってしまう田代。
慌てて車に逃げ込む北沢と君塚。
車はヨーコに突進する。
逃げるヨーコ。
「キャーッ!!」
跳ね飛ばされてうつ伏せに倒れるヨーコ。

・・・

はっとするヨーコ。
記憶が戻ったのだ。
車から降りて走り出すヨーコ。
慌ててトオルが追うが、見失ってしまう。

9.
田代は、指名手配されている久保山たちに麻薬を渡すのを渋り、代わりに銀星会に売り込もうとしていたのだ。 それを知った久保山たちに呼び出されて揉み合っているうちに誤って射殺してしまったのだった。 残った北沢と君塚はあくまで麻薬を要求。しかし田代は既に銀星会に麻薬を売り渡してしまっていた。

その頃、漸くヨーコの身元が判明した。

本名 田代千香子
年齢 16歳
住所 中区山元町1−48
職業 スーパー勤務

あぶない刑事 ヨーコの住むアパートに赴いたユージは管理人に鍵を開けてもらい中に入る。
飾ってある写真に並んで写っている田代とヨーコ。
ふたりはやはり兄妹だった。
更に、田代から来ていた手紙で、
「近いうち大金を手に入れる。それをしばらく預かってくれ」
と頼んでいることもわかった。
ヨーコはそれを不審に思って山下埠頭に会いに行き、事件に巻き込まれたのだ。

と、そこへ玄関のドアが開き、ヨーコが帰ってきた。
ユージの姿にはっとして、ドアを閉めるヨーコ。
ユージが飛び出すと、アパートの下では、今まさに北沢と君塚によってヨーコが車に拉致されようとしていた。
二階から飛び降りて、車の屋根に飛び乗るユージ。
ユージは車中に押し入り、ヨーコを抱きかかえて飛び降りた。
「大丈夫か?」と気遣いながら、飛び散ったヨーコのバックの中身を集めるユージ。
その中には、コインロッカーの鍵が・・・。

10.
あぶない刑事 病院で手当てを受けるヨーコ。
カオル「大下さんが庇ってくれたおかげでね、かすり傷で済んだ。何ともないって」
ユージ「俺の方は月賦で買ったスーツがちょっと風通しよくなっちゃったが」
と後ろを向けると、ズボンのお尻が破れている。
ヨーコ(くすりと笑って)「すみませんでした」
田中「さ、おじさんたちに思い出したことを話してもらおうか」
プイと後ろを向いてしまうヨーコ。
憤然とする田中。
ユージ「まあまあまあ」
となだめて、カオルに連れられて行くヨーコを見送りながら
「いくら覚悟はしていても、まさか兄貴がヘロインの密輸してたんじゃショックが大きかったんでしょう」
タカ「それに山下埠頭の件も」
田中「え、じゃ久保山やったのも田代か」

11.
病室のベッドに横になって、さっきの鍵を見つめているヨーコ。
そこへ、見舞いの花束が届く。
贈り主はユージ。
微笑むヨーコ。
そこへカオルがやってくる。
そっとベッドの陰に鍵を隠すヨーコ。

12.
病院の玄関を飛び出すヨーコ。
待たせてあったタクシーに乗り込むヨーコをユージが車でつける。
着いた先は、駅のコインロッカー。
鍵を開けると、入っていたのは紙包み。
その中に札束が。
あぶない刑事 驚いて紙袋をロッカーに戻すヨーコ。
鍵を掛けようとするが、ふと胸のペンダントをつかんで、ユージのことを思い出す。
・・・ペンダントを首にかけてくれるユージ・・・花束・・・。
思案するヨーコ。
再びロッカーを開けて紙包みを取り出して腕に抱え、振り向くと、そこにはユージが。
ユージ(微笑んで)「きのう記憶が戻ったあとにお兄ちゃんにあって、ロッカーのキーを預かったんだ?」
ヨーコ、うなずく。そして
「でも本当なんですか。・・・会わせてください。お兄ちゃんに会わせてください!」

13.
山下埠頭に停泊するサルビア号。
鞄を下げた田代がやってくる。
そこへ車に乗った北沢と君塚が現れて、田代の鞄を奪い取る。
しかし張り込んでいたタカたちによって銃撃戦の末、逮捕される。
鞄の中身は、勿論、空。

サルビア号に乗り込もうとする田代をタカが呼び止める。
「待てよ。妹にさよならぐらい言ってやったらどうなんだ」
「・・・妹?」振り向く田代。
車の中からユージ、そしてヨーコ。
ヨーコ「お兄ちゃん・・・」
田代「千香子」
あぶない刑事ヨーコ「これは・・・麻薬を売ったお金なの!?」
田代「それはお前のもんだ。俺はお前を学校に行かしたかった。俺の代わりに、学校へ行って欲しかったんだ。
だから俺は、1度だけ・・・。そして俺は二度と日本に戻る気はなかった・・・」
タカ「田代、それは違うな。お前はただ妹を利用しようとしたんだ」
田代「千香子・・・」
田代は銃を構える。
「金をこっちに寄越せ、千香子」
紙袋を投げつけるヨーコ。札束が舞ったすきに田代の銃を撃つユージ。
「立てよ」
田代を殴るユージ。
ヨーコ、目に涙をいっぱいためて
「お兄ちゃん・・・嘘よね。ホントは・・・ホントは私のために・・・」
泣きじゃくるヨーコ。

14.
タカとユージのはからいで、田代は自首したという形になった。
「わし以上の浪花節じゃないか。何がハードボイルドだ。」
と言いながらも、ニンマリ笑う課長。

あぶない刑事ヨーコの働くスーパー。
いっぱいに商品を満載した買い物籠を持ってレジに来るトオルとカオル。
ヨーコ(笑顔で)「いらっしゃいませ!」
トオル「これも」
ヨーコ「毎度ありがとうございます!」
タカとユージも現れる。
タカ「お前らいくら買い物したって彼女の成績が上がる訳じゃないんだから」
ユージ「儲かるのは経営者だけなんだから」
トオル「先輩たちはお金がなくて、買いたくても買えないんでしょうー?」
「バカヤロー、言ってんじゃねえ」「俺達だって、なあ」
と言いながら2人が籠から取り出したのは、チューインガムたったひとつ。
「これ下さい!」「領収書もお願いします!」
カオルのアップで
「・・・バカッ」
(終)






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